木工のこと、日々の仕事のこと
Craft Recorder

手仕事の確固たる余地

機械があってこその木工仕事であるが、手持ちの工具でしかできない仕事もある。写真はご存じカンナ(鉋)で、アナログな工具の代表格だ。このカンナの刃を研げて、調整できて、巧みに操れることが、プロの木工家のあかしであると、よく言われる


木工やクラフトといえば、
手作りでスローなイメージがあるかと思いますが…。

実際は、重さ500キロ以上はある、据え置きの木工機械をドンドン回し、
手持ちの電気工具を振り回して加工しているのが現実だ。

作業の効率化が必要だから。

すべて手作業で、クラフトを作ったなら、
法外に高いもを買っていただくか、ないしは、
利益の出ないまま、小生が飢え死にするか、どちらかだろう。


もちろん、スクエアクラフトでも例外ではない。
切る、削る、穴をあける、ほとんどの工程で木工機械を使っている。
発売となる木のバターケース「リアル バターケース」も
おのれの発想が前提ではあるけど、
製作にかんしては機械の力に頼っている。


そんななかでも。
手仕事でおこなわれる部分がある。

写真のバターケースのシェイプをつくる工程だ。


「リアル バターケース」は、
スクエアクラフトのホームページ [square products]の写真のとおり、
微妙な曲線で構成されている。

それを削って決めるために、
「カンナ(鉋)」を使っている。


カンナで削って、バターケースのシェイプを決めていく。緊張するが、形が浮かび上がってくる歓びをしみじみ感じる工程だ
この写真のように。

おもに、フタの上部を削るために使っている。
上部には、ゆるやかなアールがついている。

その曲線、場所により、微妙に変化させている。
単純に、カドが丸いわけではない。

単純なアールなら、トリマーという電動工具で、秒殺で決まる。
そのトリマーで片づけるやりかた、デザインもあるが…。
それなら、大きなメーカーさんが作ればいいことだ。
なにも、わたしがやる必要はない。


エッジが立って、スクエアなように見えて、
じつは、微妙なアールがついて、柔和な印象を秘めている。
手で持っても、痛くはない。
そんなカッコよくて、かつ優しいデザインのバターケースを作りたかった。

スクエアクラフトのバターケースは、機構や機能だけがセールスポイントではない。
デザインも、それを実現させている手仕事もウリなのです。


手仕事でしかできない仕事があるはず。
だから「手仕事の確固たる余地」を確保し、残す。
残したい。残すべき。
それが、一職人、クラフトマンとしての矜持であり、義務だと思う。

現実的には、生きる余地をつくること、と考えている。


11/05/17 recorder-001

小鉋(こがんな)
大きさは手のひら程度。小鉋は、細かい部分の面取りをしたり、曲面を削ったりするために用いられる、機動力の高い道具だ。
バターケースの曲面構成は、この小鉋で、あらかたのラインを形づくってから、当て木をしたサンドペーパー(紙ヤスリ)で念入りに仕上げをして、シェイプを決めている。
これは技術専門校(訓練校)時代に買った学校指定のもので、これを使うと、自分自身をを木工の原点に帰することができる。
【Link】バターケースについての工房内リンク