安曇野随一の観光スポットといえば、わさび田だろう。
穂高駅の東に位置する有名なわさび農園には、
その清楚かつスケールが大きい景観を求めて、
クルマが、観光バスが、レンタサイクルが、
いっぱいやってくる。
春・夏のシーズンともなると、
周辺道路は渋滞となり、たいへんなことになる。
いっぽう、いまは冬。シーズンオフ。
わさび田には人影まばら、とはいかないまでも、空いている。
冬のわさび田が気にいっている。
空いているというのもあるけど、
冬をおすすめする別の理由があって…。
なぜ春や夏ではないのか?
春から夏、秋にかけて、わさび田の上には、
ネットがかかっているのだ。
日差しを遮る、薄い網。
水温が上がらないよう日光を吸収する黒い網。
これが、見る者にとっては、ちとよろしくない。
もちろん、わさびにとっては、これがいいんだろうけど。
冬はネットがないから、
わさびの群れがつくる、
幾筋ものみどりの帯が並ぶさまを
見渡すことができる。
冬だからワサビないんじゃない? という心配はなし。
わさびは収穫まで、2、3年かかるため、
冬でも青々と葉をつけてます。
凛とした空気、雪の北アルプスの山なみ。
晴れた冬の日にわさび田へ行くといい。
陽だまりの水辺に日光が乱反射して、
凍えた頬も緩んでしまうだろう。
■2011/02/08■
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Illustration:Motoko Umeda |