「バターケース」って、海外で言っても通じないそうだ。
butterの“r”の発音を巻き舌にしても、通じない。
「butter case」という語句そのものが存在しないのだ。
ためしに、海外の通販サイト、
アメリカのamazonで、イギリスのamazonで、
「butter case」で検索したが、ひとつもヒットしない。
なんとなんと。
和製英語なんです、バターケース。
そうそう。正しくは…。
「butter dish」バターディッシュなんです。
箱でも、缶でも、バターケースと呼ばない。
陶器、ガラスはもちろん、木製でも、バターディッシュ。
では、いったい、いつから「バターケース」と呼ばれ始めたのか?
検索キーワードの人気度を教えてくれる
「google insights」で「バターケース」を調べると
2004年までは、値がほぼゼロだったものが、
2005年から、急上昇している。
つい最近のことじゃないか。
明治時代、文明開化のころじゃあるまいし…。
そして、いったい誰が、そう呼び始めたのか?
捜査線上には、そのお姿が浮かんではいるが、
検事ではあるまい。詮索も見込み捜査もしません。
スクエアクラフト初の商品、
木のバターケースがついに発売となる。
写真を揃えて、いま紹介文を書いているところだ。
んでもって。
「スクエアクラフトの【バターケース】ついに発売!」でいいのか?
…うーむ。
では…
「スクエアクラフトの【バターディッシュ】Now on sale!」にするか?
…カッコよすぎ、かな。
じゃあ…
「安曇野の工房から【バター入れ】をあなたに♪」はどうだ!
…なんだかなぁ。
それじゃあ、和のテイストで…
「末永く使える工芸品【バター容器】おすすめの逸品」なんてどうか。
…むむむ。
いっそのこと、戦時中に英語が禁止されたときみたいに
「川原一木の【牛酪保存容器】で快適生活」
…うーん。あるイミ、スタイリッシュだが。
いいんです、「バターケース」で。
むしろ、名づけ親には感謝すべきだ。
その名でマーケットが成熟したのだから。
ニッポンでは、バターケース、な・ん・で・す!
ロサンゼルスが、日本では
「ロス」で通っちゃうように。
正しくは「LA」です、ちなみに。
アメリカに行ったときのこと。
取材先のメーカーの人との食事中に、
「Los Angelsは、ニホンでは“ロス”っていうんだ」とハナシを振ったら、
「Why!?」と、困ったような笑顔が返ってきた。
ついでに「Los Angels」の発音を指摘され、
うまく発音できない私をネタに、大笑いしてたけど……。
■ 2011/01/16■
archives
Illustration:Motoko Umeda
|