工芸品をつくる。
木工品を製造する。
製作するには、いくつかの方法、技法がある。
ここではおもに、組みかたについて、簡単に解説してみる。
●刳物(くりもの)
木を彫る、削ることによって形を作る。
いちばん原始的な加工法といえるか。
ノミで彫ったり、ロクロを回して削ったり。
いまや、NCルーターでやっつけることも多いけども。
●指物(さしもの)
木を板状、棒状に加工したものを、
組み手、継ぎ手を用いて組み上げる。
重箱や箪笥(たんす)が代表的だろう。
●曲物(まげもの)
薄い板を茹でたり、蒸したりして、加熱してから、
型にはめるなどして曲げて成形する。
いわゆる「曲げわっぱ」などが、それ。
おひつや、メンパ(弁当箱)が挙げられる。
ざっとではあるが、技法について説明したのは、
このたびリリースする木のバターケースについて、
技術的な話がしたいから、なのだ。
いま、この世で売られている木のバターケースは、
刳物、あるいは指物の技法を用いられている。
どちらかといえば、刳物が多いか。
さて、スクエアクラフトのバターケースは、
「指物」の技法を用いて作っている。
しかし当初は、
「刳物」の技法を採用していた。
なぜ、指物にしたのか?
それは、ひとえに加工精度が必要となったからだ。
どうして、加工精度が必要なのか?
これについて説明していると、
ちょっと、いや、かなりハナシが長くなる。
ざっくり言えば…完璧な木製のバターケースが作りたかったのだ。
それは、自身の仕事上、目指すところであって、
使っていただく方にとっては、
知っていただく必要はないことかもしれない。
なので、おいおい、お話ししようと考えている。
知ってもらうことは、作り手として嬉しいことだ。
つい先日、冬至の日。
バターケースの“バージョン3.4”が組みあがった。
これをもって、ようやく、
木のバターケースに、自分なりの結論を出すことができた。
長かった。産みの苦しみを味わった。
にもかかわらず、
その軌跡はすでに楽しい記憶となっている。
きっと。
演奏家が研鑚を積み重ねた結果、
目指すステージで演じられることとなる。
そして、リハーサルを繰り返し、
迎えた本番の前夜。
そんな瞬間に似ているのだろう。
■ 2010/12/26■
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Illustration:Motoko Umeda
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