長野県は木曽にある「上松技術専門校」と、
伊那にある「伊那技術専門校」へいってきた。

ご存じない方のために。
技術専門校(以下、技専)とは?

職業訓練校といったほうが、わかりやすいか。
『こんな仕事がしたい』と思うひとが、
専門的な技術を身につけられる、訓練施設だ。

木工にかんしていえば、
長野県には、先述の2校に
木工科、木材工芸科がある。


え〜と。
ふたつの技専へ足を向けたのは、
訓練(授業)のなかで、訓練生がつくったもの、
すなわち、家具や工芸品を売る、
「即売会」があったからだ。


“訓練生がつくったもの”
この言葉から、どんなモノをイメージしますか?
もし、それが
“日曜大工、プラス・アルファ”と思っていらっしゃるなら
それは、ノンノン…。ちがうのです。

触れてみたくなる、美しい仕上がり。
目を凝らして見てしまう、精緻な加工。
作り手の思いを感じる、高いデザインセンス。

「う〜ん、ほしい…」と思うこと、うけあいだろう。

それが証拠に、会場には、
通路を自由に歩けない、
商品をつぶさに見ることができないほど、
たくさんのお客さんが集まる。


なにをかくそう(隠してないか?)
わたしは、技専の卒業生だ。

技専では、この業界で生きてくための技術を
あますところなく、教えてもらった。
その恩師と再会できるのも、うれしい。

いっしょに学んだ同級生とも会った。
近況を報告し、語り合った。

やっぱ、竹馬の友、いや、木馬の友か?
いろいろ話すことで、
自分を原点に帰すことができたし、
自身のビジョンを再確認できた。


さて、長野県においては、
技専の木工関係の学科が、縮小傾向にある。
卒業しても、そのさき、就職率がよろしくない。
そんな事情をかんがみての方針と聞いている。

たしかに、現状はキビシイ。

しかし、長野県の技専は、
その指導、教育レベルに、
全国の有名、有力な工房、作家から、
高い評価を受けているというのに。

『なんとかならぬものか!』


4月になれば、また、若者が技専にやってくる。
木と対峙し、夢を見る、自分の可能性を模索する。

何かを留保しつつ、かもしれない。
あるいは、アセリを感じながら、かもしれない。
自分の才能、能力への失望もやってくる、かもしれない。

それでも前向きに、ひたむきにつくる。

そんな光景が、毎年、展開されている。
本気度という尺度でみれば、
全国屈指の学校、訓練機関であると思う。


■ 2009/03/10 ■

【追記】(2011/O3/07)
長野県で木工関係の学科がある技術専門校は、
「上松技術専門校」のみとなりました。



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Illustration:Motoko Umeda
2008年4月〜2011年3月 工房創成期の軌跡
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それでも、前向きに