小布施という町を知ってますか?

長野市の北東部に接する、人口1万2千人の小さな町。
“おぶせ”と読む。

オブセッテ???

「栗かのこ」と言えば、ピンとくるかもしれない。
長野のメジャーなおみやげのひとつ。
栗のペーストのなかに、栗の甘露煮がごろごろと。
おいしいです。あれ。
小布施は栗で有名だ。


先日、その小布施にいってきました。
となりの須坂市で、クラフトフェアがあり、そのながれで。

小布施に寄ったのは、クリ目当てであることはたしかだ。
着くなり、栗菓子の老舗が経営するカフェに入り、
モンブランとアイスクリームを食べましたし。

でも、クリ食べて帰るだけでは、モッタイナイ。
小布施の魅力は、栗だけでない。

町並み。つとに趣がある。
歩道には、木のレンガが敷き詰めてある。
クリの材が使われているらしい。
歩くと、なんとも心地よい。

横道に入ると、むかしの商家や屋敷が。
大切に保存されていることは、一目瞭然。
その風景は、そこに多くの観光客が群れていても、
いっこうに動じない風格がある。


そして、葛飾北斎のコレクション。
「北斎館」という施設で観ることができる。
スゴイんです。これが。
とくに肉筆画は、かなりの良作がそろっている。

しかしなぜ、小布施に北斎が?
北斎はバリバリの江戸っ子絵師である。
なので、画業のほとんどが江戸でなされている。
が、北斎は小布施をおとずれ、滞在していた時期があった。
住まうこと、約4年。

どうしてそうなったのか?

北斎は江戸で、小布施の豪商と知り合った。
その豪商、名を高井鴻山という。
鴻山は、北斎のパトロンとなったのだ。
北斎と鴻山は交流を深め、
ついには、鴻山は北斎を小布施に招いた。

スゴイです。これは。
ようするに、富を文化につぎ込んだ、というわけ。
つまり、メセナである。

小布施では、
民と官が協力し、町づくりを行っていると聞く。
官民ではない。“民官”だ。


先述のカフェに話は戻る。
お菓子、そして紅茶もおいしかったが、
特筆すべきは、店のしつらいとサービス。
端的にいえば、田舎っぽくないのだ。

あくまでも類推だが、
経営者は、都会でしっかりと息を吸い、
なんらかを得てきた。そうお見受けした。

江戸の御代しかり、平成の御代しかり、である。


■ 2008/06/17 ■



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Illustration:Motoko Umeda
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